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科学・技術

うるう秒の廃止 - 2035 年に向けた国際合意と技術的影響

うるう秒とは何か - なぜ挿入されてきたのか

うるう秒は、原子時計に基づく国際原子時 (TAI) と、地球の自転に基づく世界時 (UT1) のずれを 0.9 秒以内に保つために UTC に挿入 (または削除) される調整秒です。1972 年の UTC 導入以来、2016 年末までに計 27 回のうるう秒が挿入されました。挿入は通常 6 月 30 日または 12 月 31 日の 23:59:59 の後に 23:59:60 を追加する形で行われます。

うるう秒が必要になる根本原因は、地球の自転が一定ではないことです。潮汐摩擦により地球の自転は長期的に減速しており、1 日の長さは 100 年あたり約 2.3 ミリ秒ずつ長くなっています。ただし短期的には地殻変動や大気循環の影響で加速することもあり、うるう秒の挿入間隔は一定ではありません。1972〜1979 年は毎年挿入されましたが、2017 年以降は 1 回も挿入されていません。

2022 年の CGPM 決議 - 廃止への国際合意

2022 年 11 月、第 27 回国際度量衡総会 (CGPM) は、2035 年までにうるう秒の挿入を停止する決議を採択しました。この決議は、うるう秒が現代の通信・金融・航法システムに与えるリスクが、天文時との同期を維持する利益を上回ると判断されたことを意味します。

決議では、UTC と UT1 の差が 1 秒を超えることを許容し、将来的に差が大きくなった場合 (数十年〜数百年後) に「うるう分」のような大きな調整を行う可能性を残しています。具体的な移行方法は国際電気通信連合 (ITU) が 2035 年までに策定する予定です。

IT システムへの影響 - なぜうるう秒は厄介なのか

うるう秒が IT システムにとって問題となる理由は、23:59:60 という時刻が通常の時刻表現に存在しないためです。多くのソフトウェアは 1 分 = 60 秒を前提としており、61 秒目の存在を正しく処理できません。2012 年のうるう秒挿入時には、Linux カーネルのバグにより Reddit、Mozilla、Foursquare などの大規模サービスが障害を起こしました。

航空管制システムでは、うるう秒挿入の前後に GPS 時刻 (うるう秒を含まない) と UTC の差が変わるため、システム間の時刻同期に細心の注意が必要です。金融市場では、取引のタイムスタンプに 1 秒の不連続が生じると、取引順序の整合性が崩れる可能性があります。これらのリスクを回避するため、多くの組織がうるう秒の廃止を支持してきました。

リープスミア - 現在の回避策

うるう秒の問題に対する現在の主要な回避策は「リープスミア」(leap smear) です。Google は 2008 年から、うるう秒を挿入する代わりに、その前後 24 時間にわたって各秒を微小に伸縮させる方式を採用しています。具体的には、うるう秒の前後 12 時間 (計 24 時間) の間、各秒を 1/86400 秒 (約 11.6 マイクロ秒) ずつ長くすることで、1 秒分の調整を滑らかに分散させます。

Amazon (AWS) や Microsoft (Azure) も同様のスミア方式を採用していますが、スミアの開始時刻と期間が各社で異なるため、異なるクラウドプロバイダー間でうるう秒前後の時刻を比較する際には注意が必要です。2035 年のうるう秒廃止後は、この種の回避策自体が不要になります。

2035 年以降の世界 - 何が変わるのか

うるう秒が廃止されると、UTC は事実上 TAI と固定オフセット (現在 37 秒) の関係になります。地球の自転速度の変動は UT1 にのみ反映され、UTC には影響しなくなります。天文学者や航法システムは引き続き UT1 を参照しますが、一般の IT システムや日常生活では UTC のみを意識すれば十分になります。

長期的には UTC と太陽時 (UT1) の差が蓄積していきます。現在の地球の減速率が続くと仮定すると、100 年後には約 1 分、1000 年後には約 1 時間のずれが生じます。しかし、これは数世代にわたる緩やかな変化であり、日常生活に影響を与えるレベルに達するのは遠い将来です。CGPM の決議は、この長期的なずれへの対処を将来の世代に委ねる判断でもあります。

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