メインコンテンツへ
科学・技術

電波時計の仕組み - 標準電波を受信して自動補正する技術

電波時計の基本原理 - 標準電波による時刻配信

電波時計は、国の標準時を管理する機関が送信する長波標準電波を受信し、内蔵のクォーツ時計を自動的に補正する仕組みです。日本では情報通信研究機構 (NICT) が運用する JJY (送信局: 福島県おおたかどや山 40 kHz、佐賀県はがね山 60 kHz) が標準電波を 24 時間送信しています。

電波時計の精度は、受信に成功している限り標準電波の精度 (10 の -12 乗、つまり 30 万年に 1 秒) と同等です。受信できない期間はクォーツ時計として動作するため月差 ±15 秒程度の精度に低下しますが、次回の受信成功時に自動補正されます。多くの電波時計は 1 日 1〜数回、深夜の受信条件が良い時間帯に自動受信を試みます。

タイムコードの符号化 - 1 分間で時刻情報を伝送

JJY のタイムコードは、搬送波の振幅変調 (AM) によって 1 秒に 1 ビットの情報を伝送します。各秒の先頭で搬送波の振幅を下げ (パルス)、パルス幅で 0 (0.8 秒)、1 (0.5 秒)、マーカー (0.2 秒) の 3 値を表現します。60 秒 (1 分) で 1 フレームの時刻情報 (年、月、日、時、分、曜日) が完成します。

受信機は最低 1 分間の連続受信でフレームを復号し、時刻を確定します。実際には受信エラーの検出と再試行のため、2〜3 分の受信時間を確保するのが一般的です。BCD (二進化十進数) で符号化された各フィールドにはパリティビットが含まれており、1 ビットの誤りを検出できます。

受信条件の最適化 - なぜ深夜に受信するのか

長波 (40/60 kHz) は電離層の D 層で反射・吸収される特性があります。日中は太陽の紫外線により D 層の電子密度が高くなり、長波の吸収が増大するため、受信可能距離が短くなります。夜間は D 層が消失し、E 層での反射により電波が遠方まで到達するため、受信条件が大幅に改善されます。

建物内での受信は、鉄筋コンクリートの壁や金属製の家具が電波を遮蔽するため困難になることがあります。受信感度を高めるには、窓際に時計を置く、送信局の方向 (東日本なら南西方向のおおたかどや山、西日本なら東方向のはがね山) に向ける、電子機器 (PC、テレビ) から離すといった工夫が有効です。

世界の標準電波 - 各国の送信システム

標準電波の送信は各国が独自に行っています。ドイツの DCF77 (77.5 kHz、マインフリンゲン送信所) はヨーロッパ全域をカバーし、イギリスの MSF (60 kHz、アンソーン送信所)、アメリカの WWVB (60 kHz、コロラド州フォートコリンズ) がそれぞれの地域に時刻を配信しています。中国の BPC (68.5 kHz) は中国全土をカバーします。

マルチバンド対応の電波時計は、JJY、DCF77、MSF、WWVB など複数の標準電波に対応しており、海外渡航時にも現地の標準電波を受信して自動的に現地時刻に切り替わります。ただし、標準電波の到達範囲外 (太平洋上、アフリカ、南米など) では受信できないため、これらの地域ではクォーツ時計として動作します。

GPS 電波時計との違い - 衛星受信の利点と制約

GPS 電波時計は、GPS 衛星からの信号を受信して時刻を取得します。長波標準電波と比較した利点は、地球上のほぼどこでも受信可能であること、精度がナノ秒レベルであること、タイムゾーンの自動判定 (位置情報から) が可能であることです。セイコーの「アストロン」やカシオの「G-SHOCK GPW」シリーズがこの方式を採用しています。

一方、GPS 受信には屋外または窓際での空の見通しが必要であり、建物内部では受信困難です。また、GPS 受信回路は長波受信回路より消費電力が大きいため、ソーラー充電との組み合わせが一般的です。長波電波時計は建物内でも受信可能な場合が多く、消費電力も極めて小さいため、壁掛け時計や置き時計には長波方式が適しています。用途に応じた使い分けが重要です。

XB!LINE

この記事は役に立ちましたか?